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 07 トランペットフラワー

◆バリ島に水の寺院がある。ブラタン湖に幾つかの小さな五重の塔が配置されている。周りは水だ。なぜ水に浮かばせたのか。その知識がない。見ていると胸騒ぎがする。そして神がいるような気がする。他の地上の寺院はぽっかりと空白のような虚無感が漂うのだが、水の寺院には彼らの神が住処としているような、そんな幻想を抱かせる。
◆付近を歩く。朝顔をトランペットのような長い形にした花が群生している。
熱帯の花というより朝の露に似合う、あるいは雨上がりの水滴に似合う花だ。
花びらは白。中心部は紫色。この花の種は睡眠薬として、炒って使われる、とマデが言っていたのを思い出した。ほんのそばに神がいる。その気配がする。気になって振り返る。花々はしめやかに、僕は湖のうえへ。


 08 ハイビスカス

◆乙女という語はバリ島のまだうら若い女性に似合う。日本では死語に近い言葉だが乙女の心を掴む作家が現れたと週刊誌で話題になっていた。
その花の葉を深皿に入れそれを手で揉むようにつぶして液を出す。その液を乙女の髪に塗り、手で頭皮を揉む。黒々と、つややかな髪のお手入れである。またその赤い花びらを手で摘み、皿に置いて、棒のようなものでつぶす。つぶした花を爪に貼り付ける。一週間は保もつマニキュアである。種類の多い花だが、ひとつひとつの使い方を昔から言い伝えで知っている。別の方法。耳に飾って微笑を誘う。これは無意識の術なのだ。思わず誘われて微笑むと、乙女は恥じらってまた微笑む、という風に。


 09 フランジパニ

◆南の国に行けばたいていの女性は耳に花を飾る。バリでは歓迎の意味を込めて飾る。もちろん自分を美しくみせるためでもあろうし、心というのは伝染をするから、女性の微笑みと美しい花を見たら、見た人の心にその花のような微笑みを映し出す。白い花びらだが、芯のほうは黄色い。ピンクの花もある。大きい花びらのものがジャワ産で小さいのがバリ産である。
◆バリでは「ジュプン」と呼ぶ。香りがよい。レゾートホテルはこの香りがするところが多い。パリマナンというバリ島でとれる石灰石(色は黄色っぽい)のような石を臼のようにして、フランジパニの花びらを集めて盛る。イバというホテルではそのように飾っている。
◆エステでは、必ず、バスタブにこの花を浮かべる。張りのある花びらは油性分が多いのかもしれない。
◆英語圏では「プルメリア」という。チャンパカは観光客の目にはなかなかとまらないから、フランジパニがバリ島を印象づけるのである。フランジパニのレイをもらったら、捨てずにお風呂で使おう。この頃の流行語「ああ、癒され」たと思うに違いない。


 10 睡蓮 (ウォーターリリー)

◆ロータスといわれるのは花びらの大きなもの。蓮のある池に細い、可憐な花びらを幾つももつ花が浮かんでいる。バリ島のホテルには必ずと言っていいほどみかける。カメラにおさめるロータスを撮るのはなかなか難しいがウォーターリリーは、疲れきったように間延びしてしまうロータスとくらべれば、いつまでも可憐なままだ。「睡蓮」というフランス印象派・モネの絵をみたことがある。あの絵は薄い光の中でぼやけた睡蓮だった。バリで見るのは苔色をした水に鮮やかに浮かんでいる。水に浮かぶ花というのも思えば珍しい。堂々と観賞にたえる美しさであり、人の目をとらえる花。
◆花はみんな静かだが、とりわけこの花は群で咲かないため、ひっそり静かである。


 11 カラー(マウナ ロア)
◆気品のある部屋、気品のあるレストラン、気品のあるホテル、気品のある女性にしか似合わない白い花。一枚の花びらの裏に棒のように花芯が伸びている。初めてみると「おやっ」と思う。この棒が花弁をさせていて、どちらがなくて釣り合いがとれない。微妙なものである。日本でみるカラーは花弁が薄く、どこなよっとして、あふれ出る生気がないがバリのカラーはみずみずしく、気品がより高い。
◆難しい花だと思う。野で美しいというより、どこか洗練された場所でその美しさを発揮するのではないか。しかも1本ではなくて、まとまった量で。
この花を使いこなせれば、一流の演出家だ。あるいは一流のデザイナーだ。
◆熱帯の夜、満月が昇る。風がそよ吹く。大理石のテーブルのあるテラス、そこに一輪挿しのカラーがある。すると、スマールプグリガンの風のようなガムラン音楽が聞こえてくる。ここはアマヌサホテルだ。ただし料金$600。


12 メラティー
◆お香、エッセンシャルオイル、マッサージオイル、といえばメラティ。ジャスミンのことをバリではこう呼ぶ。アトピーや乾燥肌の人には向かない。
なぜだかわからないが精油などの本には書いてある。
◆中華料理を食べる。油を使うものが多いから口の中、お腹がもったりする。
最後にプアール茶、ウーロン茶、ジャスミン茶、どれにしますか、といわれたら、どれを選ぶだろう。おそらく、3種とも脂肪分を溶かすのだと思う。
日本料理のあとジャスミン茶は合わない。他の2種と比べたら、全く合わない。中華料理とぴったり合うのはジャスミン茶である。ぴったりするほどに脂肪分をとるのだと思う。
そうでないと、乾燥肌にむかない、とならないだろう。少しでも油がほしい肌の油をとってしまうわけだから。
◆よい香りがするからお茶に入れた、ではなく、よい効用があるから、お茶に入れたら、その香りがまた格別であった、と考えた方が、人間の知恵について考えるには適当である。人間の昔からの知恵というのは驚くべき科学的で、今の人間は昔から知っていたことを実証しているだけだ、ということもできる。

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