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01 チュンパカ (Chumpak)
◆草花ではなく木に咲く花である。花びらは細長く、色は緑がかった黄色。 神はこれほどまでにこんな妖しい匂いを好むのかと思うほどの香り花である。 ◆地に置く供物を「チャル」といい、下界の悪霊ブタカラに捧げる。 家の屋敷内にある寺や神棚、車の中などに置く供物をチャナンという。 天界の霊(神)に捧げる供物である。善なる霊、悪なる霊どちらにも平等にこのチュンパカを捧げるのである。 ◆チュンパクは女性を思わせる。淫らになってしまいそうな香りである。 人間は神に女性を捧げられないから、チュンパカにしたのだろうか。 初め、この花を選んだ人に、女性と神との交合がイメージされたのか、あるいは憑依の対象は女性だったのかわからない。熱帯のこの花の匂いは爽やかな熱帯の朝とうだるような熱帯、魔物がきそうな夜の闇の中で、催淫術を使いながら優しくバリ島を覆っているのである。 ◆また この花の名前を人間の改名のときにつける女性も多い。 例えば、カーストの違うもの同士が結婚した場合、女性はチュンパカと名づける。 02 セダップ マラム (Sedap Malem)
◆「ここからがあなた方だけの空間です。」あるいは、「この夕べの時間から朝が明け るまであなた方お二人の時間です。」ホテルスタッフはこう言いたげのようだ。バリのホテルの玄関ロビーのいたるところにこの花が生けられている。そして夕刻になると部屋に飾られる。 ◆緑の茎の先のほうに小さな白い花弁がいくつも蕾むように咲くのが特徴で、3本、4本と束ねられるとさらに静かな気配を漂わせる不思議な花だ。妙に心が熱っぽく、ざわめく男の気持ちも、この空間に充たされた女の気持ちもこの花の香りがさらに気持ちをかきたてるのだ。 「夜来香」と中国では呼ばれるそうな。 03 サンダット (Sandat)
◆チュンパカと同様に供物に捧げられる。これも樹木の花だ。チュンパカに似ているように思えるが、やや緑がかっている。香りもチュンパカほどには強くない。少女の香りとでも言えばいいのだろうか。 ◆女性にも強烈なフェロモンをだしているよう人と、あっさりとした香りを発する人がいる。神々への役割があるかのように供物に捧げる花もその辺は区別されてサンダットは置かれる。つまり、置く人がいた。すると、神は複数であろうか。つつましやかにこの花はバリ島で存在している。でしゃばることなく、ひかえめで、それでいて香りを放ち続けている。そのようなサンダットを好む神がいるに違いないと先人は思ったのだろう。 ◆朝の花だ。決して夜の花ではないのである。チュンパカと同様、この花の名前も改名の時使われる。 なものを見る。覗く。調べる。また観る。「みる」 を繰り返す。女を「みる」ようだ。 04 ロータス
◆蓮。極楽の花、とはよく言ったものだ。蓮の花が浮かぶ池に小さな橋が架かっている。そこを二人は渡ることになる。それを渡れば極楽なのだ。極楽という言葉にはある嘘っぽさが付きまとうから、こう言おう。極めて愛の空間。ロータスは暗示であり、比喩である。誰かが設計の段階で考えた。 「蓮池を渡らせよう。」と。設計者の幻想が旅行者の幻想と一致する。 ところで蓮の花は開かないうちがよい。つまり渡る時に花は閉じていて、夜の闇の中で大胆に開け。 05 ブーゲンビリア
き、今日枯れる。次の日も、また次の日も一日に一度は生まれて死ぬ。激し く生と死を展開したいとは思わないか。 ◆この花を仮に一時間見ているとしよう。すると僕達は奇妙な感覚に襲われ る。黙々と生と死を繰り返す生き物がここに存在することがなまなましいの だ。花のそばで新聞を読んでいても、ざわざわと語りかけてくる気配だ。時 に一陣の風が吹く。花が落ちる。葉が落ちる。葉がこする。花がもっとざわ めく。ブーゲンビリアの宿命をいとおしいとおもわないか。 06 フラボヤント
◆ここはホテル ジ オベロイのゲート。 よく見ると巨大なサヤエンドウような袋がいくつも垂れている。豆科の植物だろう。この実を食べればどうなるか。この実は研究、分析されているか。 緑の葉の間にぶらさがる巨大で黒いサヤエンドウと細くて小さい赤い花はアンバラン スではないか。つまり矛盾ではないか。 ◆そこにこの植物の秘密がある。鮮やかに惹きつけ、その中に惹き込まれると、巨大なサヤエンドウが見えてくる。そしてなおも全体からこの木、この花、この黒い怪しげなものを見る。覗く。調べる。また観る。「みる」 を繰り返す。女を「みる」ようだ。 |
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