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 11 冠

  NHKのドラマで松阪慶子が推古天皇を演じていた。古代を舞台にしたドラマは珍しく、聖徳太子の頃の飛鳥時代の時代考証には苦労するのだろう。ドラマはさしておもしろくもなかったが、衣装や典礼がおもしろかった。これをバリにビデオにして持っていきたいと思った。
 推古天皇の王冠。これは金である。バリの結婚式や削歯儀礼の時などにかぶる女性の冠。これも金である。それがそっくりなのである。
 金で冠を作り、特別な者が頭にかぶるという発想はどこからきたのだろう。
 日本ではいつのまにか金の王冠をかぶらなくなり、天皇も、各時代の政権の大将も地味なものになっていった。
 それにしても、金というのはどの色にでも合わせることのできる不思議な力を持っている。この地球上で金ほど他の関係において万能なものはない。
 高貴で、すべてを取り込む力を持ち、健全にして、華麗である。
 この冠を頭に乗せれば、きっと人格が変わるではないか。金冠をかぶることは全ての人格を吸収する権威ある神のようなものの象徴なのかもしれない。そして女はみんな美しくなる。


 12 空の音楽

  鳩に錫製や、陶器の笛をつける。100羽ほどの鳩を一斉に空に放つ。
群れとなった鳥達は空で音楽を鳴らす。指揮をとる若者がいる。
 この音が心地よい音なのだ。音楽をこのように楽しむ。ボナ村。デンパサールの村。時々人々はこんな楽しみ方をする。バリの生活に入っていくことんなく、バリをひとつの映画、あるいは劇場だと考える。これが旅の醍醐味でもある。我々の感覚とは人々の音の楽しみ方が目に付く。
違う織物、染め物、生活雑貨、夜のレゴンダンスやケチャ。ホテルの庭園、 渚。ウブドのジャングルやライステラス。空にたなびくウンブルウンブル。村の門にたてられるペンジョール。至るところに置いてある悪霊や守り神。
 しかし、鳥で奏でる空の音楽が一番いい。水で奏でる音楽は日本にもあるが、この音楽だけはバリで聞けない。
 鳥の行方を追い、音の流れと行方を追う。夢中になって鑑賞していて、鳥にあの空まで行ってもらわなければ、人間には出せない笛の音である。
 遊びスタイルにセンスがあると思う。こんなところがバリの魅力なのだ。
映画の中からすっと飛行機で戻ってきて日本の日常に戻る。そしてまたバリを思うのである。


 13 レゴンダンスの基本ポーズ

  日本舞踊に基本となる立ち居のポーズがあるのかどうか知らない。レゴンダンスにはあるのだそうだ。アグムのポーズと言う。まず、胸をそるように張り、肩の位置まで腕を水平に。片手は上向き、もうひとつは下向きで指をひらひらさせる。腰をくねるようにして中腰になりお尻を突き出す。


 レゴンダンスは飽いてくる人もいるかもしれないが、2度、3度と見ているうちに、だんだんとおもしろくなってくる。どこを見るのか、どこの動きに集中してみるのか、全体のバランスはどうか、身体のきれはどうかなどと考えながらみているわけではないが、自然と回を重ねるうちに目も肥えてくるのだろう。

 神に見せるための踊りを我々観光客が見ている。神のために人間はこれほどの高度な踊りをつくりだしたのかと思うと、バリ島民の形象やスタイルへの美意識の構造、それを作り出した伝統の共同作業に尊厳の気持ちを抱いてしまう。ティルタサリのレゴンダンスが特に優れていると思えるが、屋内で演ずるようになったのは残念である。このセンスに首をかしげるのであるが。


詳しくは
Agem(アグム)のポーズ (Balineseダンスのベース)
 * Agemとはベーシックポーズの意
  
Agem Kiri (写真上) 左の基本ポーズ
(アグム キリ)
Agem Kanan (写真下) 右の基本ポーズ
(アグム カナン)


・2つの肩甲骨を閉めるようにして胸を張る
「肩甲骨にKunci(クンチ  鍵の意)をかけて」という表現をする
・肘を肩の高さまで上げてキープする
・腰はぐっと落として片足重心の中腰姿勢。


 この姿勢で安定するまでには早くて1年、普通2年くらいかかる。 最初は先生が生徒を後ろから羽交い絞めにして形を整えていく。疲れて肘が下がってきたりするとスパルタ先生にピシッと肘を叩かれたりする。
この習得するまでは舞踊というより苦行である。ところが一度形が身体に入ってしまえばこれが結構快感なのである。また、その姿勢により身体の可動部分が非常に限られてしまうから、そこから先の動きの習得は比較的スムースになる。


 14 バタ メラ と バラ シラカン

 レンガとセメント、と勘違いされそうな石である。バリ島の家屋、建物は必ずと言っていいほどこの2つの石が使われている。レンガ色の石を「バタ メラ」といい、セメント色のほうを「バラ シラカン」という。バタメラはバックというか「地」に使われて、バラ シカンには、バロンやランダ、ガネーシャ、線的な飾りを彫られる。
 ン・グラライ空港、ネカ美術館、プラザバリ、割れ門、一昔前の建物はこのスタイルである。
 ところが最近になって、黄色っぽいパリマナンなど、これまで工事の基礎部分などで使われたいた石が、壁やプールに使われたり、造形美術の材料にされたりし、新しい建物は、バタ メラやバラ シラカンを使わなくなってきている。
 しかし、バタ メラ と ばら シラカンの建物が多くあり、そんな中でパリマナンが使われるから、パリマナンが引き立って見えるのである。そしてこの二つのスタイルに、竹、アランアラン(茅のようなもの)、椰子、が加わって、バリ島ハワイとは違う、コスモロジーを漂わせるのである。
 これにレゴンダンスが加われば、我々は、バリ島を大きく吸い込み、中毒になってしまう恐れが大である。


 15 ケチャのリズム
   火の回りにケチャを演じる人々が集まり、一斉にケチャが始まる。
 涙を流す人がいる。人が集まって素晴らしいハーモニーを作り上げた時、人というのは感動するのだ。ケチャの全体を受け止めて鑑賞する。それが1回め、2回め、するとどこかから聞こえる女性の歌声がする。地から天に優しく突き通すような声。これもケチャの鑑賞どころである。
 よそ見をしていい加減にやっているようなケチャは見ないでおこう。必ずしらける。ケチャがなぜ、賞賛され、観光客をひきつけるのか。


鑑賞するにはもうひとつ大事なことがある。それはリズムだ。ケチャは4拍子なのだが、これは今流行のトランス音楽と同様のテンポである。
詳しくはこうなる。

シリリ ポン ポン ポン と基本的な4拍子を刻む。
それに併せて異なる4つのリズムが同時に刻まれる。


プニャチャ を担当するものは 4拍子の間に チャ という叫びを7回入れる。
チャクリマを担当するものは 4拍子の間に チャを5回入れる
チャクナム は 6回
プニャンロット は 6回のチャクナム を16分の1後ろにずらして刻む。


これら4つが同時進行で刻まれると 16ビートになる。

非常に複雑で、高度なものだ。

この高度で複雑な声のハーモニーが飽きささず、1時間弱もの長丁場を 保ち、感動を与えるのだろう。人はそれを無意識に知っている。

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