03.事情聴取

昨日警察に行って来た。
事情聴取に行って来た。
本木氏といって来た。
半年も留守にしていておまけに何にも憶えてないんじゃ絶対に不利だよなぁと思っていたが出頭する道中はなんだかわくわくしてしまった。何事もコネクションのこの国で警察官である同僚の旦那が担当してくれることになっていたのでちょっと心強い。 万が一、私にとって不利なことになっていたとしてもこの旦那君が何とかしてくれるだろう、大丈夫、大丈夫。到着後、事故当日の日にち、場所等を言ったのにも拘わらずその事故記録が見当たらない。
みんなが探す。
のろのろ探す。
机を2つ置いたらもう一杯イッパイの狭い部屋に警察官だけで6人、私達を入れたら総勢8人。
んで、記録帳を調べているのは2人。 ではあとの4人はといえばなんのことはないだべっているのである。
どこで、どんな事故でなどということを噂しあっているのである。
きりっと精悍な制服姿で腰には拳銃。 んで豆なんてポリポリ食いながらひたすらだべっているのだ。
ワルン(青空喫茶)の光景と同じなんだよなー。
...さすがバリである。


実際あの事故のことはな〜んにも覚えてないので次から次への質問に正直に「憶えてない」を繰り返していたらふと「こんなんじゃ不利になるな〜」とか何とか言ってるのが聞こえたので「えっっ!まずい。ちょっと作り話でもするか」とも思ったがそれは私の良心が許さなかった。
...んな筈もなく、〜なんのことはない、作り話のしようもないほど全く何にも記憶がないのである。
朝からの記憶も所々なくなっている始末。
入院中ドクターが言っていた。 「人間思い出したくない程の強烈な記憶は消してしまうようになってるんですよ」


何十回「憶えてない」を繰り返しても何十回「ぁああ、そう、憶えてないのか。 …んでその瞬間車は警笛を鳴らしましたか?」と繰り返してくるのである。


こんなやりとりで結構な時間が経過した頃警察側の現場検証リポート登場。
事故状況の図入りである。
「なぁんだ、最初から知ってたんじゃぁん、試したな」あたりまえだ。事情聴取である。


その現場検証リポートを見ながらどのようにして衝突に至って吹っ飛ばされ落下したかとかそういうふうなことを状況をイメージしながら聞いていたらふっ飛ばされた<その娘>が可哀相になってなんだか他人事に感じてしまった。
事故シュミレーションの体験で<あの集中治療室>とか<あんな親の顔>とかがなんともリアルに蘇ってきてだんだんとせつなくなりしんみりし始める。
「まずい、この心境の降下状態はまずい」


そんな危うい状況は絶妙のタイミングで持ち直した。
“絶対満たしたいこの好奇心”に救われた。
持ち主は本木氏である。
彼は取り調べの様子を写真に撮りたいと言い出し笑顔でポーズを決める取調官をフツーにフツーにと言いながらパシパシ撮っていたかと思えば今度は「腹が減った」と署内の署員食堂へと他の警官を誘って行ってしまったり。
来るときの車中「バリで事情聴取なんてそうそう経験できるもんでないよなぁ。 ……いやいや面白がってるわけじゃないからね。」
いーえっ、面白がってましたっ!! 私はそんな彼の行動になごまされニタニタとしていた。